逆さまつ毛(内反症)とは?
逆さまつ毛(内反症)とは、本来外側を向いているはずのまつ毛が眼球に触れてしまっている状態で、眼の表面(角膜や結膜)に傷がつきます。
右のイラストのように眼瞼内反、睫毛内反、睫毛乱生などいくつかのタイプがあります。
生まれつき逆さまつ毛を持つ小さなお子さんの場合は、本人に自覚がない場合が多いので、親御さんはまつ毛が眼にくっついていないか確認してあげるようにしましょう。
- 逆さまつ毛の主な自覚症状
- 目がゴロゴロ、チクチクと痛い。
- 眼が赤い、充血している。
- 目やにがよく出る。
- かすんで、見えにくい。
睫毛内反症(しょうもうないはんしょう)
多くは先天性(生まれつき)で、図のようにまぶたの向きは正常ですが、まつ毛が眼に向かって押し倒されている状態です。
睫毛内反の子供は、生まれつきの「逆さまつ毛」に慣れているため、角膜の傷のわりに本人は異物感を訴えないことも多く、家族が「逆さまつ毛」に気付いたり、学校検診で指摘されて、眼科へ受診することがほとんどです。頻度としては、下まぶたに多くみられますが、上下とも逆さまつ毛の場合もあります。
- 治療法
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- 軽度の症例は思春期(中学生や高校生)以降に局所麻酔で手術を施行します。
- 軽度の場合は埋没法を施行します。
- 中等度あるいは重度の場合は切開法(Hotz変法)を施行します。
下睫毛内反(軽度)に対する埋没法の手術例
上睫毛内反に対する埋没法の手術例
※ 当院では、眼科的な治療適応となる疾患のみ保険診療で手術を行います。
※ 美容を目的とした自由診療は行いません。
下睫毛内反(重度)に対する切開法の手術例
上下睫毛内反(重度)に対する切開法の手術例
内眥贅皮/内眼角贅皮(ないしぜいひ/ないがんかくぜいひ)
アジア人に多く、いわゆる蒙古ヒダ(もうこひだ)と呼ばれる目頭(めがしら)の皮膚のつっぱりです。(左の写真○印)
- 治療法
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- 睫毛内反に合併して内眥贅皮を認めることがあります。
- その場合、内反の手術と同時に内眥形成術(目頭切開術)も併施します。
- 手術はZ形成術、または内田変法を施行します。
上下内反切開法+内眥形成術(Z形成)の手術例
眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)
加齢に伴い、まぶたの張りが失われると(垂直方向と水平方向のテンションの弛緩)、まぶたが内側にひっくり返り、逆さまつ毛(退行性眼瞼内反症)の状態になります。
70歳代の約3%,80歳代の約5%の方に、この眼瞼内反がみられると言われています。
- 治療法
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- 局所麻酔で日帰り手術が可能です。
- 糸を通すだけの手術(埋没法)と、皮膚を長く切る手術(切開法)があります。
- 従来の埋没法では、縦方向(垂直方向)のみを矯正するものであり、横方向(水平方向)は矯正されないため、再発率が高いとされていました。
- 当院では、水平方向と垂直方向の両方を矯正できるように改良した埋没法を施行しております。
(日本眼科学会雑誌 2011年 掲載)
日本眼科手術学会
2015年 JSOS Film Festival 部門賞 受賞 - 5分程度と短時間で施行可能で、皮膚や筋肉を剥離する切開法に比べ、低侵襲であるため患者さんの負担が少ないのが特徴です。
- 本埋没法で再発した場合は、再手術として切開法(Jones変法、Lateral tarsal stripなど)を施行します。
右下眼瞼内反症 水平方向の埋没法例の手術例
70代 男性
下眼瞼内反症 切開法の手術例
切開法として、主に以下の2術式があります。埋没法に比べて再発率は低いです。手術の所要時間は30分程度です。
1. Jones変法:下眼瞼牽引筋群を瞼板に再固定し垂直方向を矯正する
2. Lateral tarsal strip:外側の瞼板を外眼角の骨膜へ固定し水平方向を矯正する
睫毛乱生(しょうもうらんせい)
眼瞼の向きは正常で、大部分の睫毛は正常に生えていますが、一部の睫毛のみ眼球へ向かって生えている状態です。
一部の睫毛根を切除する、あるいは電気分解する方法で対応します。