2022年05月04日 その他の活動
日本眼科手術学会雑誌
詳細情報
原著論文
「退行性下眼瞼内反症に対する水平方向の弛緩の有無に応じた2種類の埋没法の術後成績」
佐藤 佑、林 憲吾、林 和歌子、水木 信久
日本眼科手術学会雑誌 p309-314, 2022
コメント
当院での2015年からの6年間で、退行性(加齢性)による下眼瞼内反(下まぶたの逆さまつげ)に対する埋没法を施行した608例を調査しました。
加齢によって下まぶたの縦向きの筋肉も横向きの靭帯も緩んで、バランスが崩れて、内反(逆さまつげ)の状態となります。
同じ加齢による逆さまつげでも、横向きの靭帯などが緩んでいる症例が大多数で約8割です。
ただし、横向きのテンションが比較的保たれている症例が約2割に見られます。
当院では、この横向きのテンションが保たれているかどうかで、2つの埋没法を選択するようにしています。
横向きの弛緩がある場合は、水平方向に広範囲に通糸する(Wide everting suture)を1本
横向きの弛緩がない場合は、垂直方向に通常の埋没法(Everting suture)を2本
この2つの術式を選択します。
いずれの埋没法でも電気メスで1mm程度の小切開から通糸するため、ほぼ無出血で、3分程度と短時間で施行可能です。
今回調査した患者さんの平均年齢は77歳でした。手術を受けられるご高齢の患者さんにも負担が少ない術式と言えると思います。
この埋没法を使い分けることで、内反の再発率は6.6%(40/608)と非常に低く抑えることができることがわかりました。
また、使用する糸は太いゴアテックス糸を4年以上使用してきました。
ゴアテックスは生体適合性が高く、人工硬膜や心臓のパッチなどに使用される素材ですが、
非常に稀に、埋没した縫合結紮部で肉芽を形成し、数か月後に結紮部が露出してくることがあります。
そのため、同程度の太さの4-0ナイロン糸を使用するように変更いたしました。その後、この合併症は見られなくなりました。
今回の原著論文では、これらのデータの詳細を報告いたしました。