2023年10月26日 筆頭和論文
日本眼科手術学会雑誌
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原著論文
「眼瞼下垂症手術前に上輪部角結膜炎を認めた症例の術後経過」
眼科手術学会雑誌 Vol.36 No.4 P607~611
林憲吾・林和歌子・小久保健一・水木信久
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眼瞼下垂症手術前に上輪部角結膜炎(SLK)を認めた26眼の術前後の経過について報告しました。上輪部角結膜炎とは、上まぶたと眼球表面がこすれることが原因で生じます。黒目(角膜)より上方の白目(結膜)にザラザラとした傷ができるのですが、上まぶたに隠れた眼の部位のため、診察でも見逃されることが多い疾患です。眼の上方にゴロゴロする異物感や熱いような痛みを自覚します。上輪部角結膜炎が術前に認められる場合、眼瞼下垂手術の術後に悪化をする場合が非常に多いため、注意が必要です。今回の調査の結果、眼瞼下垂症手術後に点眼加療のみでの改善が59%みられ、涙点プラグ挿入の追加加療を行った場合には78%の改善がみられています。手術をする前からドライアイの自覚症状がある時には、SLKがないか見逃さないようにすることと、SLKがあれば、有効な点眼治療や涙点プラグ挿入など、術前からの積極的な治療を行っていくことが必要と考えられます。
2020年10月25日 筆頭和論文
日本眼科手術学会雑誌
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笑気麻酔は、歯科や美容外科などで多く使用されております。
眼科領域における笑気麻酔の国内の論文はなかったため、
当院での涙道治療時の笑気麻酔の効果について、報告しました。
当院に笑気麻酔を導入前後の3か月間で
涙管チューブ挿入を施行した176名215側を調査しました。
涙管チューブ挿入は、局所麻酔注射のみでは、
どうしても麻酔が届かない鼻涙管深部の痛みは残ります。
笑気麻酔を導入するまでは、鼻涙管全長にわたる強度な閉塞例は
患者さんに強い痛みを我慢して頂く必要がありました。
2019年から笑気麻酔を使用するようになって、この鼻涙管の痛みが顕著に減ったことを実感します。
今回、215例での笑気麻酔の有り無しで、有意に痛みの自覚に差があることがわかりました。
2020年01月24日 筆頭和論文
あたらしい眼科
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流涙症(涙目)の主な原因として、涙道閉塞や狭窄がまず疑われますが、涙道以外に、結膜弛緩症(白目の膜がゆるむこと)が原因となることもあります。結膜弛緩症が導涙障害となっている場合,結膜弛緩症に対して治療を検討します。結膜弛緩症に対する主な治療法として、切除法(切って縫う),縫着法(切らずに縫い付ける),焼灼法(電気で焼いて縮める)などがあります。
一方,涙丘・半月襞(目頭の粘膜のコブ)が涙点を越えて耳側に偏位していることにより,涙液メニスカスの導涙障害となっている症例もあります。この涙丘・半月襞の耳側偏位の治療には,球結膜の弛緩に対する切除法と合わせて,涙丘・半月襞の切除を併用することが報告されています。
当院では,球結膜の弛緩と涙丘・半月襞の耳側偏位のそれぞれの程度から,①焼灼法,②涙丘・半月襞切除,③焼灼法+涙丘・半月襞切除,3つの術式を選択しています。今回、涙丘・半月襞切除のみ施行した症例での治療成績を報告しました。
近年,後眼部用の光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)に前眼部観察用のアタッチメントを装着し,下方涙液メニスカスの断面の高さ(tear meniscus height:TMH)を簡便に調べることが可能となりました。
今回、術前後の涙の貯留量をこの前眼部OCTを用いて数値化し、自覚的な変化のみではなく、他覚的な数値の変化でも、有意に改善することを報告しました。
2019年11月07日 筆頭和論文
日本眼科手術学会雑誌
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トピックス「眼瞼下垂手術とドライアイ」p506-511 林 憲吾
原著論文「Müller筋タッキングと挙筋腱膜前転法を併施した眼瞼下垂症例の術後成績」p577-581 林 憲吾
(同じ巻に2つ掲載されました。)
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「眼瞼下垂手術とドライアイ」
眼瞼下垂手術は、さまざまな方法がありますが、どの術式においても、眼表面への影響は起こりうるものです。
①当院におけるMüller筋タッキングと挙筋腱膜前転法との術後ドライアイについての比較
②術後ドライアイに注意すべき症例として、緑内障点眼を多剤使用中の症例、上輪部角結膜炎のある症例
上記について、解説いたしました。
緑内障点眼を多剤使用中の方は、眼瞼下垂術後にドライアイが悪化しやすい傾向があります。当院では、緑内障点眼を使用中で術前から軽度なドライアイがある方は、眼瞼下垂手術後から1か月間ドライアイ点眼を充分に使用して頂くようにご説明しております。
「Müller筋タッキングと挙筋腱膜前転法を併施した眼瞼下垂症例の術後成績」
当院では、中等度以上の眼瞼下垂に対しては、ミュラー筋タッキングを主体に手術しておりますが、ミュラー筋タッキングのみでは、開瞼が足りない場合があります。そのような場合、挙筋腱膜前転を併用した方が、開瞼がよくなり、再発も少なくなります。当院では重度な眼瞼下垂に対しては、ミュラー筋タッキング+挙筋腱膜前転法を第一選択としています。
今回の調査では、眼瞼下垂に対するミュラー筋タッキングで開瞼不足の場合、挙筋腱膜の後面から腱膜前転を追加することで、約90%の症例で開瞼幅の改善が得られました。
2019年05月24日 筆頭和論文
あたらしい眼科
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眼瞼下垂に対する挙筋腱膜前転法とMüller筋タッキングの術後ドライアイの比較
林憲吾、林孝彦、小久保健一、小松裕和、水木信久
あたらしい眼科 36(5):694-698,2019
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中等度以上の眼瞼下垂を対象に、挙筋腱膜前転法235眼瞼とミュラー筋タッキング208眼瞼の術後のドライアイを比較した結果、術後早期のドライアイの自覚症状と角膜上皮障害は、ミュラー筋タッキングに有意に少ないことを報告しました。
当院の方針として、軽度の眼瞼下垂には挙筋腱膜前転法を、中等度以上の眼瞼下垂にはミュラー筋タッキングを優先しております。