2016年11月06日 執筆著書
眼科臨床エキスパート 「眼形成手術 眼瞼から涙器まで」
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Baggy eyelid とは、いわゆる「下まぶたのたるみによるふくらみ」を意味します。
眼の周りには眼窩脂肪と呼ばれる脂肪の塊がありますが、この脂肪を抑える薄い透明な膜(眼窩隔膜)が、加齢によって薄く弱くなってきます。さらに、まぶたの皮膚やその下の眼輪筋のゆるみにより、眼窩脂肪が徐々に前方に出てくると、下まぶたにふくらみが現れてきます。40歳代くらいから徐々にこの加齢性の変化がみられます。
軽度のbaggy eyelidは、視機能に異常をきたすものではありませんので、整容的に改善を希望される場合は、健康保険適用の手術ではなく、自費の美容外科による手術となります。
重度のbaggy eyelidで、まぶたのふくらみにより、メガネのレンズに下まぶたが触れてしまう場合や視野障害となる場合、視機能の改善のために手術を検討することがあります。
手術は、下まぶたの皮膚から切開する方法(経皮アプローチ)とまぶたの裏の粘膜から切開する方法(経結膜アプローチ)があります。
経結膜アプローチは、皮膚を切開する必要がなく、粘膜側から3か所の眼窩脂肪を適量切除する方法で、軽度のbaggy eyelidに良い適応です。主に美容外科で行われることが多い術式です。
経皮アプローチには、主に2つ術式があります。
まつ毛から数ミリしたのラインで皮膚を切開し、眼窩隔膜を切開します。眼窩隔膜内の眼窩脂肪を①切除するのか②移動させるのか、で2つの術式に分かれます。
①単純眼窩脂肪切除
下まぶたの眼窩脂肪は3つのコンパートメントに分かれており、この3つの脂肪のかたまりを適量切除します。ただし、脂肪を多く切除しすぎると、下まぶたがくぼんでしまいます。
②眼窩脂肪移動(Hamra法)
脂肪を切除するのではなく、下まぶたのふくらみの下に溝ができている部分に脂肪を移動させる術式です。下まぶたを触ると固い頬の骨に触れますが、この頬の骨の表面にある骨膜に脂肪を固定します。
上記の3つの術式の手順と術中写真および術前後の例を含めて解説しました。
2016年11月04日 国内学会発表・講演
第70回 日本眼科臨床眼科学会
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今年の「眼形成の基本」インストラクションコースでの私が担当させて頂いたのは眼瞼下垂の全般でしたので、眼瞼の解剖や様々な眼瞼下垂の手術の使い分けについて、解説いたしました。
今回は主に3つの術式、挙筋腱膜前転法、挙筋短縮術、前頭筋吊り上げ術について、それぞれの具体的な動画と注意点について説明させて頂きました。
直近の1年間で私が担当した眼瞼下垂症手術を集計すると、約800例で、約85%は眼瞼皮膚切除と挙筋腱膜前転法で、約12%は挙筋短縮術、約3%が前頭筋吊り上げ術でした。
8~9割の症例は、比較的侵襲の少ない術式で対応できますが、やはり1~2割の症例は、挙筋機能が不良で、次の一手(挙筋短縮術あるは前頭筋吊り上げ術)が必要となります。
2016年10月27日 執筆著書
臨床眼科 2016 美しさを追求する眼形成
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加齢に伴う逆さまつげで最も多く見られるのが、眼瞼のゆるみによって内側にひっくり返る「眼瞼内反症」です。
この内反症を診察するうえでの検査のポイントと手術方法について解説しました。
検査では、縦方向のゆるみと横方向のゆるみを確認する必要があります。横方向のゆるみを簡単に確認する方法として、pinch testと呼ばれる方法があります。これは下まぶたを手前に引っ張って何ミリ眼球から離れるかを調べる方法で、8mmを越えると横方向のゆるみがあると判断されます。
手術方法として、大きく分けると切開法と埋没法があります。切開法には、縦方向の筋肉を短縮固定する術式と横向きの筋肉や靭帯を短縮する方法があります。
埋没法には、従来の縦方向を矯正する埋没法と、私が主に施行している横方向の埋没法(Wide everting suture)があります。
本稿では、出血の少ない高周波メスで皮膚に1~2mmの小さな穴を開けて、太いゴアテックス糸(CV-5)を用いて、水平方向に短縮するWide everting sutureについて手順を解説しました。
外来診察で水平方向の弛緩が認められた内反症であれば、この埋没法は、出血も少なく、10分程度で施行可能ですので、特に抗凝固剤などを内服中のご高齢者には、非常に有用な術式です。
2016年07月02日 国内学会発表・講演
第5回 日本涙道・涙液学会
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涙目やメヤニの原因となる涙道閉塞(鼻涙管閉塞)に対する一般的な治療は、涙道内視鏡を用いて閉塞している部位を開けて、涙道用のチューブを入れる(涙管チューブ挿入術)が第一選択です。
ただ、この涙管チューブ挿入で、すべての患者さんが治癒するわけではなく、一定割合で再閉塞がみられます。国内の400例を超える大規模な調査では5~6年と長い期間でみると、3人に1人くらいの割合で再閉塞することが報告されています。当院で2015年7月から2016年6月までの1年間に406例の涙管チューブ挿入を施行しましたが、印象として15%くらいの患者さんに再閉塞がみられ、5%の患者さんは涙嚢鼻腔吻合術(DCR)を追加で施行しました。
この涙嚢鼻腔吻合術は、涙の通り道の途中に、鼻の中へ抜ける別の道を開ける手術です。従来の皮膚を切開して行うDCR鼻外法と、最近の主流となりつつある鼻の中から内視鏡を用いてドリルなどを用いて開けるDCR鼻内法があります。局所麻酔で手術も可能ですが、手術時間も長く、鼻出血もあるため、全身麻酔で施行する施設の方が多いのが現状です。私もDCRが必要な患者さんは、横浜南共済病院あるいは聖隷横浜病院に入院して頂き、全身麻酔で手術を担当させて頂いております。
近年、半導体レーザーを用いて、短時間で局所麻酔で施行可能なレーザーDCRが注目されています。国内での報告はまだ少ないですが、海外では数多くの報告があり、手術の数年後の成功率(涙目の消失)は70%前後という報告が多いようです。当院でも2015年から日帰りで局所麻酔で行うレーザーDCRを始めております。今回、当院で施行した15例の経過とその手術動画について報告しました。
DCR鼻内法とレーザーDCRを組み合わせた低侵襲な手術を目指し、その治療成績の向上にむけて取り組んでいます。