最新の院外活動

2022年11月27日 執筆著書

「日本の眼科」

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クリニックで行う外来小手術

わかりやすい臨床講座

「加齢性下眼瞼内反症に対する埋没法」

林憲吾 p1552-1556

図1

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加齢性下眼瞼内反症(加齢による下まぶたの逆さまつげ)の治療について執筆を担当させていただきました。

要約

「内反症には,眼瞼内反,睫毛内反,睫毛乱生,睫毛重生があるが,それぞれの病態によって,その治療法が異なる。下眼瞼内反症は,主に加齢による眼瞼内の支持組織の弛緩に伴い,瞼板が内転するもので,日常診療で比較的多く見かける疾患である。本稿では,加齢による下眼瞼内反症に対する術前の診察のポイントと,治療法として短時間で低侵襲な埋没法の手技および再発を抑えるための注意点について述べる。」

 

2022年11月12日 国内学会発表・講演

第36回 日本眼窩疾患シンポジウム

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一般演題

「眼瞼下垂手術前に上輪部角結膜炎を認めた症例の術後経過」

林憲吾

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上輪部角結膜炎(SLK)は、非常に稀な疾患で、通常のドライアイの角膜の傷ではなく、上方の結膜(白目の部分)に傷ができるものです。

ゴロゴロする異物感がありますが、角膜に傷がないため、見逃されていることもあります。

この上輪部角結膜炎がある患者さんに眼瞼下垂手術を施行すると、結膜の傷が悪化することが多いため、当院での5年間の眼瞼下垂手術症例(7996眼瞼)を調査しました。

術前からSLKを認めた症例は26眼と全体の0.3%と非常に少ないものでした。

特徴としては、女性でドライアイの自覚症状(ゴロゴロする)がある方、特に甲状腺疾患により眼球突出がある場合は、要注意です。

どのような下垂の程度(軽度~重度)でも、どの手術術式でも、SLKは術後に悪化することが多いことがわかりました。

ドライアイ点眼で約50%の症例で改善し、涙点プラグ挿入で約75%の症例で改善を認めました。

眼瞼下垂手術により、一時的にドライアイになり、かつ前転した挙筋のボリュームで上まぶたと眼球表面との摩擦が亢進し、SLKが悪化することが考えられます。

このSLKがある場合は、眼瞼下垂の手術前から積極的にSLKに対する治療を行い、眼瞼下垂手術後に一時的に悪化するため、追加治療を検討する必要があると思われます。

 

 

2022年10月15日 国内学会発表・講演

第76回 日本臨床眼科学会 

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インストラクションコース

「眼形成の基本 眼瞼下垂症手術」

前頭筋吊り上げ術

林憲吾

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眼瞼下垂に対する手術を特集としたインストラクションコースで、前頭筋吊り上げ術について解説を担当させて頂きました。

眼瞼下垂に対する手術は、様々な術式がありますが、挙筋腱膜やミュラー筋を介して、挙筋を前転する手術がメンイとなります。

私が執刀を担当してきた眼瞼下垂11,200眼瞼中、前頭筋吊り上げ術は0.8%と頻度は非常に少ないですが、一定数この手術が必要な最重度の眼瞼下垂は存在します。

 先天性の眼瞼下垂でも、軽度~中等度の下垂であれば、挙筋前転で対応可能な症例が大部分です。ただし、まぶたを挙げる機能がほぼない挙筋の変性(線維化)や欠損が著明な最重度の眼瞼下垂の場合、不適切な挙筋前転を行うと、まぶたを開けることも閉じることもできない状態となります。このような場合は、おでこの筋肉(前頭筋)の動きをまぶたに連結する「前頭筋吊り上げ術」が必要となります。

幼児の場合、重度の眼瞼下垂を放置すると視機能の発達を妨げ、弱視となってしまうことがあるため、一時的な糸吊り上げを施行します。この効果はおよそ2~3年で減弱します。中顔面が発達した5~6歳の就学前後に、永続的な吊り上げ術を施行することが理想的です。幼児のため、いずれも全身麻酔下での手術が必要となります。

永続的な吊り上げ術に使用する吊り上げ材料には、大きく分けて、自家組織(自分の足などの筋膜)と人工材料(ゴアテックス:PTFEシート)があります。

大腿筋膜は国内の形成外科では最も一般的に使用される材料です。異物反応や感染などの合併症がほぼないことがメリットです。一方で、筋膜は移植後に収縮します。既報では6か月で15%の長さが収縮するとされています。そのため、収縮を予想して、長く緩めた状態で移植固定するのですが、半年後、数年後、10年後の収縮を完全に予想することは困難です。そのため、頻度は少ないと思いますが、移植された筋膜が予想以上に収縮した場合、まぶたが閉じない(兎眼)の状態となります。この点が筋膜のデメリットとなります。この場合、移植筋膜を取り除く必要があります。

人工材料のゴアテックス:PTFEシートは現在、国内でも特定保険医療材料として、眼瞼下垂に使用することが認められ、医療機関で使用することが可能です。このシートのメリットは、術後に収縮することがないため、筋膜のように術後に徐々に過矯正となる心配がない、糸吊り上げのように下垂の再発がない、術後に低矯正であった場合は、シートの長さを再固定することでまぶたの開き方を簡単に微調整することができるという点が挙げられます。ただし、デメリットとして、人工材料ですので、異物反応として2~3%の割合で、異物反応肉芽腫や感染により露出することがあり、再手術を検討することがあります。

 今回は、これらの内容を手術手技と手術前後の経過を含めて解説させていただきました。

 

2022年07月22日 国内学会発表・講演

第 17 回 iseminar x 教育webinar

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眼瞼疾患

~眼瞼下垂・眼瞼内反・眼瞼腫瘍~

林憲吾

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Webでの収録講演となりました。

眼科医の教育セミナーで、眼瞼手術について、解説いたしました。

2022年05月04日 その他の活動

日本眼科手術学会雑誌

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  原著論文

「退行性下眼瞼内反症に対する水平方向の弛緩の有無に応じた2種類の埋没法の術後成績」

佐藤 佑、林  憲吾、林 和歌子、水木 信久

日本眼科手術学会雑誌 p309-314,   2022

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当院での2015年からの6年間で、退行性(加齢性)による下眼瞼内反(下まぶたの逆さまつげ)に対する埋没法を施行した608例を調査しました。

加齢によって下まぶたの縦向きの筋肉も横向きの靭帯も緩んで、バランスが崩れて、内反(逆さまつげ)の状態となります。

同じ加齢による逆さまつげでも、横向きの靭帯などが緩んでいる症例が大多数で約8割です。

ただし、横向きのテンションが比較的保たれている症例が約2割に見られます。

当院では、この横向きのテンションが保たれているかどうかで、2つの埋没法を選択するようにしています。

横向きの弛緩がある場合は、水平方向に広範囲に通糸する(Wide everting suture)を1本

横向きの弛緩がない場合は、垂直方向に通常の埋没法(Everting suture)を2本

この2つの術式を選択します。

いずれの埋没法でも電気メスで1mm程度の小切開から通糸するため、ほぼ無出血で、3分程度と短時間で施行可能です。

今回調査した患者さんの平均年齢は77歳でした。手術を受けられるご高齢の患者さんにも負担が少ない術式と言えると思います。

この埋没法を使い分けることで、内反の再発率は6.6%(40/608)と非常に低く抑えることができることがわかりました。

また、使用する糸は太いゴアテックス糸を4年以上使用してきました。

ゴアテックスは生体適合性が高く、人工硬膜や心臓のパッチなどに使用される素材ですが、

非常に稀に、埋没した縫合結紮部で肉芽を形成し、数か月後に結紮部が露出してくることがあります。

そのため、同程度の太さの4-0ナイロン糸を使用するように変更いたしました。その後、この合併症は見られなくなりました。

今回の原著論文では、これらのデータの詳細を報告いたしました。

2022年04月13日 国内学会発表・講演

第九回 日本眼形成再建外科学会

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一般講演

「眼瞼下垂手術後に上輪部角結膜炎が悪化した症例」

林憲吾

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図4

図2

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上輪部角結膜炎(Superior limbic leratoconjunctivitis:SLK)は、

上方の角膜と結膜の上皮障害で

①涙液減少、②上眼瞼圧の上昇、③上方の結膜弛緩

などにより上眼瞼と眼球表面の摩擦が亢進することで発症すると言われています。

通常のドライアイは、角膜下方に上皮障害(SPK)をきたしますが

このSLKは、上まぶたの裏が擦れる部分なので眼球の上方がザラザラとした傷ができます。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)で眼球突出を伴う症例では、このSLKが合併することがあります。

眼瞼下垂手術後、一時的なドライアイ(SPK)は程度の差はありますが、よく見られます。

適切な手術であれば、ヒアルロン酸点眼などで、1か月以内にドライアイは落ち着きます。

ただし、このSLKは別次元で、眼瞼下垂術前にSLKがある場合は要注意です。

眼瞼下垂手術後にSLKが著明に悪化することがあります。

このSLKの頻度は、1%未満と稀な疾患ですが、

術前にドライアイの自覚症状(ゴロゴロするなど)がある場合、

通常の角膜の下方の傷(SPK)のみではなく、SLKがないか確認する必要があります。

SLKがある場合、眼瞼下垂手術前に、適切な点眼治療と上下の涙点プラグ挿入などで

SLKを軽減した上で、眼瞼下垂手術を行うことが重要と考えます。

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