2022年07月22日 国内学会発表・講演
第 17 回 iseminar x 教育webinar
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眼瞼疾患
~眼瞼下垂・眼瞼内反・眼瞼腫瘍~
林憲吾
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Webでの収録講演となりました。
眼科医の教育セミナーで、眼瞼手術について、解説いたしました。
2022年05月04日 その他の活動
日本眼科手術学会雑誌
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原著論文
「退行性下眼瞼内反症に対する水平方向の弛緩の有無に応じた2種類の埋没法の術後成績」
佐藤 佑、林 憲吾、林 和歌子、水木 信久
日本眼科手術学会雑誌 p309-314, 2022
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当院での2015年からの6年間で、退行性(加齢性)による下眼瞼内反(下まぶたの逆さまつげ)に対する埋没法を施行した608例を調査しました。
加齢によって下まぶたの縦向きの筋肉も横向きの靭帯も緩んで、バランスが崩れて、内反(逆さまつげ)の状態となります。
同じ加齢による逆さまつげでも、横向きの靭帯などが緩んでいる症例が大多数で約8割です。
ただし、横向きのテンションが比較的保たれている症例が約2割に見られます。
当院では、この横向きのテンションが保たれているかどうかで、2つの埋没法を選択するようにしています。
横向きの弛緩がある場合は、水平方向に広範囲に通糸する(Wide everting suture)を1本
横向きの弛緩がない場合は、垂直方向に通常の埋没法(Everting suture)を2本
この2つの術式を選択します。
いずれの埋没法でも電気メスで1mm程度の小切開から通糸するため、ほぼ無出血で、3分程度と短時間で施行可能です。
今回調査した患者さんの平均年齢は77歳でした。手術を受けられるご高齢の患者さんにも負担が少ない術式と言えると思います。
この埋没法を使い分けることで、内反の再発率は6.6%(40/608)と非常に低く抑えることができることがわかりました。
また、使用する糸は太いゴアテックス糸を4年以上使用してきました。
ゴアテックスは生体適合性が高く、人工硬膜や心臓のパッチなどに使用される素材ですが、
非常に稀に、埋没した縫合結紮部で肉芽を形成し、数か月後に結紮部が露出してくることがあります。
そのため、同程度の太さの4-0ナイロン糸を使用するように変更いたしました。その後、この合併症は見られなくなりました。
今回の原著論文では、これらのデータの詳細を報告いたしました。
2022年04月13日 国内学会発表・講演
第九回 日本眼形成再建外科学会
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上輪部角結膜炎(Superior limbic leratoconjunctivitis:SLK)は、
上方の角膜と結膜の上皮障害で
①涙液減少、②上眼瞼圧の上昇、③上方の結膜弛緩
などにより上眼瞼と眼球表面の摩擦が亢進することで発症すると言われています。
通常のドライアイは、角膜下方に上皮障害(SPK)をきたしますが
このSLKは、上まぶたの裏が擦れる部分なので眼球の上方がザラザラとした傷ができます。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)で眼球突出を伴う症例では、このSLKが合併することがあります。
眼瞼下垂手術後、一時的なドライアイ(SPK)は程度の差はありますが、よく見られます。
適切な手術であれば、ヒアルロン酸点眼などで、1か月以内にドライアイは落ち着きます。
ただし、このSLKは別次元で、眼瞼下垂術前にSLKがある場合は要注意です。
眼瞼下垂手術後にSLKが著明に悪化することがあります。
このSLKの頻度は、1%未満と稀な疾患ですが、
術前にドライアイの自覚症状(ゴロゴロするなど)がある場合、
通常の角膜の下方の傷(SPK)のみではなく、SLKがないか確認する必要があります。
SLKがある場合、眼瞼下垂手術前に、適切な点眼治療と上下の涙点プラグ挿入などで
SLKを軽減した上で、眼瞼下垂手術を行うことが重要と考えます。
2022年03月25日 執筆著書
OCULISTA 眼瞼手術アトラス
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今回の眼科雑誌OCULISTAは、眼瞼手術の特集で、
聖隷浜松病院 眼形成眼窩外科 出身の医師18名による
様々な眼瞼手術の術式について解説するという企画でした。
私は、「眉毛下皮膚切除」について担当させて頂きました。
眼瞼の余剰皮膚を切除する場合、予定重瞼線から切除するパターンと眉毛の下で切除するパターンがあります。
それぞれ、メリットとデメリットがあります。
予定重瞼線からの切除する場合
メリットとしては、眼窩脂肪を切除できる、挙筋前転を行うことができる、重瞼線を作成することができるという点が挙げられます。
デメリットとしては、皮膚が厚い場合、重瞼線の上の皮膚の厚みが強調され、不自然な厚ぼったい二重となる点があります。
眉毛下で切除する場合
メリットとしては、皮膚の厚みのある眉毛の部分で切除して引き上げるので、自然な仕上がりとなります。
デメリットとしては、眼窩脂肪は切除できない、挙筋前転を行えない、もともと一重の方は術後も一重のため皮膚が被さりやすいという点が挙げられます。
術前の診察で、どちらのほうが、患者さんの意向に沿っているのか、よく相談する必要があります。
一般的には、皮膚の厚く硬い場合は、まず眉毛下での切除をお勧めいたします。
この術式の手技は、比較的容易ですが、仕上がりに最も差が出るのは、
どこの部分で何ミリ幅 切除するのかというデザインかと思われます。
アジア人の場合、外側(耳側)の皮膚のたるみが多くでるパターンが大多数ですが
内側(鼻側)から外側(耳側)までほぼ均一に被さるパターンの方もいらっしゃいます。
今回は、そのデザインと縫合のコツについて、私見を述べさせて頂きました。
2022年02月26日 執筆著書
臨床眼科 特集:眼瞼疾患の「切らない治療」vs「切る」治療
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今回の雑誌「臨床眼科」は、眼瞼の霰粒腫や内反や下垂など様々な疾患に対して、切らない治療と切る治療を比較して解説するという特集で、私は下眼瞼内反症の切らない治療として、埋没法を担当させていただきました。
埋没法は、出血が少なく、3分程度と短時間で施行可能です。
術前に、まぶたを手前に引っ張り、水平方向(横向きの靭帯)の緩み具合を判断することが重要です。
約8割の患者さんは、水平方向の緩みを認め、その場合は垂直方向のみの矯正では、再発しやすいので、水平方向も短縮するように1本で横向きに広範囲に糸を通す埋没法を施行します(Wide everting suture)。
約2割の患者さんは、水平方向の緩みがなく、その場合は垂直方向を矯正する通常の埋没法(Everting suture)を2か所施行します。
この埋没法の使い分けることで、当院の約600例のデータでは再発率は約7%と非常に少ない結果でした。(原著論文は2022年に掲載予定です)
再発する例の特徴は、目頭の靭帯(内眥靭帯)と目尻の靭帯(外眥靭帯)の弛緩が非常に強い場合です。この場合、水平方向を埋没法で短縮しても、靭帯の緩みが残存するため、適切な矯正ができないため、このような場合は、埋没法と別の切開法(外眥靭帯を骨膜に短縮固定するLateral tarsal strip)を併用する必要があります。